卸売業のFAX・電話受注をやめる前に|受発注システムの選び方と移行手順

卸売業では、いまもFAXと電話が受注の主役です。手書きの注文書を基幹システムに打ち直し、電話では「いつもの数で」を聞き取って伝票を起こす——この手作業が、ミス・残業・属人化を静かに生みます。
ただし、卸売でFAX・電話がなくならないのには理由があります。取引先ごとに発注方法も単価も違い、受ける側だけでは一本化できないからです。だからクラウド化のコツは「FAXを今すぐやめる」ことではありません。取引先を巻き込みながら、社内から段階的に一元化することにあります。
この記事では、自社に合う受発注システムの見極め方と、FAX・電話中心の受注をクラウドへ移していく手順を、順を追ってお伝えします。大事なのは、機能の多さで選ばないこと。導入したあとにきちんと運用へ乗るか——取引先ごとの単価に対応できるか、いまの基幹システムとつながるか——まで踏み込みます。数多くの受注現場に伴走してきて見えてきた、つまずきやすいポイントも交えていきます。
卸売業でFAX・電話がなくならない理由|業界ごとに違う「やめられない事情」

「取引先がバラバラだから」——理由を一言でいえばこれですが、現場からすれば当たり前すぎて、解決の役には立ちません。大事なのは、この「バラバラ」が業界ごとにまるで違う顔をしていること。同じ卸売でも、食品と建材では事情がまったく別です。
たとえば食品卸。日配品は締め間際に「いつもの数、でも今日は雨だから2割減らして」と入ってきます。この微調整は、電話でないと伝わりません。建材や金物の卸なら、品番は数万点。取り違えが命取りなので、職人さんが手書きの発注書をFAXしてくるうえ、掛け率も工務店ごとに違います。
「卸売のFAX・電話問題」とひとくくりにされがちですが、実際は業界の数だけ事情があります。
主な業界について、FAX・電話が残る事情と、だからこそシステム選びで効くポイントを並べてみます。
| 業界の例 | FAX・電話が残る事情 | だから選定で効くこと |
|---|---|---|
| 食品・日配 | 締め間際の微調整、当日発注が多い | FAX・電話を残したまま取り込める |
| 生鮮(青果・水産) | 相場で単価が毎日動く | 取引先別・変動する単価に対応 |
| 建材・金物・住設 | 品番が膨大、掛け率が取引先ごと | 取引先別の単価・商品の出し分け |
| アパレル・雑貨 | 色・サイズをまとめて大量発注 | 品番マスタと注文の自動紐付け |
事情は違っても、根っこは共通です。注文を送るのは取引先で、その取引先ごとに単価もルールも違う。これが、FAX・電話が残る構造的な理由です。株式会社ウキヨの調査(2026年)でも、43.5%が「取引先ごとにルールが違い、ひとつのシステムに統一できない」ことを課題に挙げています。
裏を返せば、選ぶ条件もここで決まります。自社の注文の入り方を残したまま取り込めるか。取引先ごとの単価に対応できるか。この2点が、卸売の受発注システム選びの分かれ目です。
FAX・電話受注のまま積み上がる3つのコスト|ミス・時間・属人化

FAX・電話の受注は、大きなトラブルさえ起きなければ「回っている」ように見えます。ただ、受発注のデジタル化をお手伝いしていると、回っているはずの現場ほど、ミス・時間・属人化という3つのコストを静かに抱え込んでいることに気づきます。どれも外から見えにくいのが、やっかいなところです。
コスト1|転記ミスと、その後始末の時間
FAXの注文書を目で読み、基幹システムに手で打ち込む。この作業で、桁の打ち間違いや品番の取り違えがまったくのゼロ、という会社にはなかなか出会いません。人が介在する以上、一定の確率で必ず起きます。そして現場が本当にすり減るのは、ミスそのものより後始末のほうです。誤りが見つかるたびに確認の電話やリファックスが走り、1件あたりの対応時間がじわじわ膨らんでいきます。
コスト2|受注業務の属人化
電話で「いつものを、いつもの数で」と受ける注文は、その取引先の癖を覚えている担当者にしか捌けません。受注現場でいちばんよく聞く悩みが、これです。担当者が休むと注文が止まり、引き継ぎ資料は本人の頭の中だけにある。受注担当の採用は年々難しくなっていて、「あの人に辞められたら回らない」という状態を抱えたままの卸売会社は、決して少なくありません。
コスト3|出社しないと受注できない(事業継続の弱さ)
FAX機と固定電話は、オフィスにいなければ触れません。災害や交通の乱れで出社できなくなれば、受注業務そのものが止まります。「受注のためだけに出社していた」という話も、決して珍しくありませんでした。インターネット環境さえあればどこからでも注文を確認できる仕組みは、平時の効率化だけでなく、いざというときの備えにもなります。
この3つは、金額に直すと社内でも動いてもらいやすくなります。下表に自社の件数と時間を当てはめて計算してみてください。
| 受注経路 | 1日の件数 | 1件の入力・確認 | 1日の合計 |
|---|---|---|---|
| FAX | 40件 | 3分 | 120分 |
| 電話 | 15件 | 4分 | 60分 |
| 合計 | — | — | 約180分(3時間) |
1日3時間の手作業なら、月20営業日で約60時間。人件費を時給2,000円で換算すると、手入力と確認だけで月におよそ12万円、年間で約140万円が消える計算です(前提:時給2,000円・月20営業日)。この試算は、社内で移行を提案する際の根拠資料にもそのまま使えます。
卸売業の受発注システムの選び方|4つの判断軸

多くの卸売会社の導入を見てきて言えるのは、機能の数で選んだ会社ほど、あとで「使わない機能の設定」に時間を取られている、ということです。選ぶときに見るべきは、自社の受注のかたちに合うかどうか。その判断軸を4つに整理しました。
軸1|FAX・電話を残したまま一元化できるか
最初に見るべきは、FAX・電話・メールの注文も同じ画面に取り込めるかどうかです。Web発注だけに寄せる製品では、Web化できない取引先の注文が手作業のまま残り、二重管理になります。ここで役立つのがAI-OCR(紙やFAX・PDFの注文書をAIが読み取ってデータにする技術)です。取引先にやり方を変えてもらわなくても、受注データを一つにまとめられます。
軸2|取引先に負担をかけず広げられるか
受発注システムは、取引先に使ってもらって初めて効果が出ます。実際、案内しても使ってもらえずFAXが減らない原因の多くは、取引先側の手間や費用にあります。取引先の担当者がスマホやパソコンからマニュアルなしで注文できること、そして取引先側の利用料がかからないことが、定着を左右します。
軸3|取引先ごとの単価・掛け率に対応できるか
卸売でつまずきやすいのが、この点です。得意先ごとに単価・掛け率・取扱商品が違う場合、それを画面上で出し分けられないと、手作業や電話確認が残ります。先のウキヨ調査で43.5%が挙げた「取引先ごとにルールが違う」という壁は、この機能で解けるかどうかにかかっています。実際、ここを詰めずに導入して、結局また電話確認に戻ってしまう——という例は少なくありません。
軸4|今の基幹システム・会計ソフトとつながるか
受けた注文データを既存の販売管理システムや会計ソフトに手で打ち直しているなら、効率化は道半ばです。
CSV(表計算ソフトで扱えるデータ形式)での書き出しや、API(システム同士を自動でつなぐ仕組み)連携に対応しているかを確認しましょう。基幹連携(販売管理システムへの自動連携)まで見据えると、導入後の運用が軽くなります。
各サービスのタイプ別の比較の考え方は、受発注システムの選び方を整理した別記事でも解説しています。

FAX・電話からクラウドへ|段階的な移行の4ステップ
受注業務のクラウドへの移行は一括切替ではなく、4ステップで段階的に進めるのが安全です。
全取引先に一斉にWeb発注を求めて、いちばん取引額の大きい相手に「今のままでいい」と言われて頓挫する
——これは避けたい失敗です。小さく始めて、確かめながら広げます。
ステップ1|受注のかたちを棚卸しする
FAX・電話・メール・口頭など経路ごとに、1日の件数・1件の処理時間・起きやすいミスを書き出します。前掲の試算表がそのまま使えます。
ステップ2|候補を2〜3社に絞り、自社の注文書で試す
「取引先ごとの単価が出し分けられるか」「今の基幹システムにデータを渡せるか」を、実際の注文書で検証します。カタログのスペックではなく、自社の帳票で試すのが失敗しないコツです。
ステップ3|前向きな取引先からテスト運用する
デジタルに前向きな取引先や、注文回数の多い取引先から始め、操作の疑問や設定の不備を洗い出します。本番開始は繁忙期を避けます。繁忙期に始めて現場が回らなくなる例を、何度も見てきました。
ステップ4|残るFAX・電話を取り込み、案内先を広げる
すべての取引先がすぐ切り替わるわけではありません。残るFAX・電話の注文はAI-OCRや代理入力でシステムに取り込み、運用が安定してから、案内する取引先を段階的に増やします。
最初に打つべき一手は、自社の状況で変わります。目安を表にまとめました。
| 自社の状況 | 向いている一手 | ひとことで |
|---|---|---|
| FAX・紙が多く、取引先に「やめて」と頼みづらい | AI-OCRで注文書を自動データ化 | 取引先を変えずに社内だけ効率化 |
| Web発注に応じてくれる取引先がいる | Web受発注へ切り替え | 受け方ごとデジタルに |
| 取引先ごとに単価・掛け率が違う | 取引先別の単価・商品の出し分け | 卸特有の商習慣に対応 |
| 販売管理・会計への再入力が二度手間 | CSV・API連携 | 二重入力をなくす |
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受発注システムの導入でよくある3つのつまずきと対処
進め方が分かっても、途中で止まりがちな場面があります。導入をお手伝いするなかで繰り返し見てきた3つと、その対処を挙げます。
取引先がWeb発注に切り替えてくれない
無理に依頼する前に、FAX・メールの注文をAI-OCRで取り込むところから始めます。取引先のやり方を変えなくても、受ける側の手作業は減らせます。並行して、取引先の担当者交代のタイミングや定期訪問の折に便利さを伝えると、自然に移行が進みます。急がば回れで、この順番がいちばん定着します。
社内の受注担当が乗り気でない
「今のやり方で回っている」と感じている現場ほど、言葉での説得は効きません。テスト運用の結果を数字で示すのが近道です。「転記の時間が何分減ったか」「確認の電話が何件減ったか」を共有すると、当事者ほど納得します。
基幹システムとの連携がうまくいかない
いきなりAPIでの自動連携を目指すと、たいてい設定でつまずきます。まずCSVでの書き出しと手動取り込みから始め、運用が安定してから自動化する。段階を踏むほうが、結果的に早く回り始めます。
よくある質問
BtoB受発注システムとは何ですか?
企業間の注文・受注のやり取りをオンラインでまとめる仕組みです。FAXや電話で受けていた注文をデータとして一元管理でき、転記作業やヒューマンエラーを減らせます。取引先はスマホやパソコンから注文し、受注側は届いた注文を同じ画面で管理する、というかたちが基本です。
FAXや電話の注文が多い取引先にも対応できますか?
対応できます。AI-OCRを使えば、FAX・メール・PDFで届いた注文書を読み取ってデータ化できるため、取引先に発注方法の変更を求めなくても、受注側の業務を効率化できます。取引先を変えずに、まず社内だけをデジタル化する入口として使えます。
取引先に費用負担はかかりますか?
製品によります。発注側(取引先)が無料で使えるサービスを選べば、切り替えの案内がしやすくなります。たとえばCO-NECTの場合、発注側は0円で利用できます。案内前に、取引先側の利用料と操作の手軽さを確認しておきましょう。
既存の基幹システムや会計ソフトと連携できますか?
CSVの書き出しやAPI連携に対応した製品なら、受注データを既存の販売管理システムや会計ソフトへ渡せます。二重入力を防げるかどうかは導入後の手間を大きく左右します。連携できる形式と、自社が使うソフトへの対応可否を確認しておくと安心です。
導入から運用開始まで、どれくらいかかりますか?
製品や準備状況によりますが、商品情報と取引先情報の登録が済めば運用を始められるものもあります。最初から全機能・全取引先で始めず、一部の取引先から小さく始めるほうが、結果的に早く軌道に乗ります。
セキュリティは大丈夫ですか?
取引先の情報や価格など機密性の高いデータを扱うため、ISMS(情報セキュリティの国際的な認証)を取得しているか、多要素認証やアクセス制限に対応しているかを確認します。取引先からセキュリティチェックシートの提出を求められることもあるため、その対応可否も見ておくとよいでしょう。
卸売会社でも高機能な製品を選ぶべきですか?
機能が多いほど自社に合うとは限りません。導入現場を見ていると、機能が多い製品ほど設定で止まり、使われないまま解約に至りがちです。まず解決したい課題に必要な機能から始め、後から連携や利用範囲を広げられる製品のほうが、無理なく定着します。
FAX・電話を残したまま一元化するなら|受発注システム「CO-NECT」

ここまで挙げた「FAX・電話を残したまま一元化する」「取引先ごとの単価に対応する」「基幹システムと連携する」の3つを満たす受発注システムのひとつが、CO-NECTです。私たち自身、FAX・電話中心の受注現場の課題から生まれたサービスで、卸売業の受発注業務に合わせて設計してきました。ここまで書いてきた業界ごとの事情やつまずきも、そうした導入の現場から見えてきたものです。先ほどの4つの判断軸に、CO-NECTがどう対応するかを見ていきます。
軸1|FAX・電話を残したまま一元化できる
FAXやPDFで届いた注文書はAI-OCRで読み取ってデータ化し、Web発注と同じ画面で一元管理できます。取引先にやり方を変えてもらう必要はありません。
軸2|取引先に負担をかけず広げられる
発注側(取引先)は0円で利用でき、スマホやパソコンからマニュアルなしで注文できます。費用も手間もかからないので、取引先への切り替えの案内がしやすくなります。
軸3|取引先ごとの単価・掛け率に対応できる
得意先ごとに単価・掛け率・取扱商品を出し分けられます。卸特有の「取引先ごとにルールが違う」商習慣にも、電話確認に戻らず対応できます。
軸4|今の基幹システム・会計ソフトとつながる
CSVの書き出しやAPI連携に対応し、受注データを既存の販売管理システムや会計ソフトへ渡せます。二重入力の手間を減らせます。
私たちがどれだけの受注現場に伴走してきたかは、実績にも表れています(いずれも自社調べ・自社試算)。
- 導入実績:約55,000社(自社調べ)
- 有料契約の継続利用率:98%以上(自社調べ)
- 「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2020」ニュービジネスモデル賞を受賞
- ISMS(情報セキュリティの国際的な認証)を取得。読み取ったデータはAIの学習に使いません
- AIデータ変換:注文書100件の入力が約12時間 → 約10分になった例も(自社試算)
まとめ|卸売業は「残したまま一元化」で選ぶ
卸売会社がFAX・電話中心の受発注をクラウド化する要点は、次の3つです。
すべての取引先に一度にWeb発注を求める必要はありません。AI-OCRや代理入力を使いながら、取引先のペースに合わせてデジタル化を進められる柔軟な仕組みを選ぶことが、現場に定着する受発注業務につながります。数多くの受注現場を見てきて、私たちがたどり着いた結論です。
「FAX・電話を残したまま一元化する」「取引先ごとの単価に対応する」「基幹システムと連携する」を重視するなら、受発注システム「CO-NECT」は候補のひとつです。継続利用率は98%以上、発注側(取引先)は0円で利用でき、約55,000社の企業取引を支えています(自社調べ)。AIによる注文書のデータ変換では、注文書100件の入力が約12時間から約10分になった例もあります(自社試算。精度は100%ではないため、最終チェックは人が行います)。
まずは自社の実際の注文書で試し、業務に合うかを確かめてください。
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